また、やせがひどくなると理解力が低下するため、精神面の治療をしても効果が期待できない。まずは栄養状態を改善し、脳機能も回復させてから取り組んだほうが効率的だ。やせている間は感じないようにしていた感情に気づき、治療に前向きになることも多い。

 精神面へのアプローチでは、大きな心理的負担になっている原因があれば、その解決を図る。しかし思春期のありふれたできごとであってもストレスに感じ、対処できずに摂食障害を発症していることも少なくない。

「やせや過食は患者さんにとってストレスを解放する手段なので、なかなか手放せません。そこでストレスをためこみやすい性格や偏った考え方を修正し、ストレスに直面したら他人の力を借りるとか、時には逃げるといった『多彩な対処能力(コーピングスキル)』を身につけ、やせや過食に頼らずに生きていけるようにしていきます」(同)

 治療は、病気に関する正しい知識を身につける「心理教育」と、対話を用いて心身に働きかける「心理療法」が中心だ。過食症で有効とされる心理療法には、偏った考え方を修正し行動を変えていく「認知行動療法」、他者との関係性に注目した「対人関係療法」がある。前者は保険が適用されるが、自由診療でおこなう医療機関が多いのが実情だ。拒食症でも、体重がある程度回復してからこれらの療法がおこなわれる。18歳未満では「家族療法」も有効とされている。

 食行動異常は、おさまるまでに時間がかかる。たとえば過食症なら、空腹による過食を防ぐために4時間以上の絶食を避ける、過食したくなったら家族と話をするなど他の行動をする──。こうした実現可能な対策をしながら、少しずつ過食嘔吐の頻度を減らしていく。

 なお、うつ病や不安症、強迫症、発達障害など別の精神疾患を併発しているケースが約半数あり、それぞれの病気に適した薬物治療などで、病状が改善する場合もある。

 回復には、家族や周囲の協力、他者との出会いや社会経験も大きな助けになる。鈴木医師は言う。

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