落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「15歳」。
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「15歳」。北京五輪のフィギュアスケートのワリエワ選手の年齢からこのお題になったのだろうけど、ロシアのウクライナ侵攻で全て吹っ飛んだ。北京五輪なんてありましたな……というかんじ。ワリエワはいま何を思うのだろう。人生まだまだこれからよ。
中3の1月28日、15歳になると高校受験。中学生の頃は成績優秀だった。志望校の候補は二つ。私の住んでる野田から都心に向かう途中の柏の県立名門校。男女共学で制服が無く、私服登校の自由な校風。平たく言えば、学年で一番出来るヤツがいくキラキラした学校。仮にA高としとくか。
もう一つは、学力はAよりちょい下だが(当時)こちらも歴史ある学校。ただ川を一本越えた埼玉にある、しかも男子高だ。学ランでバンカラな校風らしい。こちらはBとしようか。いや、めんどくさ。私の母校、埼玉県立春日部高校です。とりあえずここではBとする。
進路指導の先生曰く、「まぁ、どちらでもいいほうを選べ。基本的に君の人生だ」。ずいぶんと投げっぱなしな指導だった。「合格率、Aは50%、Bなら55%かな」。微妙過ぎる。試験当日の天気の具合なんかで変わってきそうな数字だ。「Aは私服で面倒臭いな。Bは毎日詰め襟だから楽だな」。完全に先生の主観だが、私も同じ感覚。「Aは柏、Bは春日部、電車で座って通えるのは春日部。柏はチャラチャラしててなぁ、オレは街を歩いてると草臥(くたび)れる」。私もです、先生。柏でカツアゲされたことがあります、僕。「ま、難点を言えば、当然だがBは女子がいないことかな。むさ苦しいけど男ばかりで楽しいこともあるだろう。恋愛とかは、まぁ諦めろ(笑)。その辺は保証する。いや、そうとも限らないか……『女子』との恋愛は無いと思え」
高校での「出会い」なんてどうでもよいのだ。私にはその時点で好きな女子がいたのだから。受験が終わったら告白するつもりなのだから。高校は別になるかもしれないが、春から付き合い始める。夢のような放課後が待っているのだ。毎日ジャスコのフードコートでイチャイチャするのだ。