あいうべ体操で、舌圧が上がる、ぽかんと口を開けることが減る、唾液が出る、誤嚥が減る、いびきが減る、などの効果が期待できる。また、口呼吸は浅くて速いが、鼻呼吸は深くてゆっくりするため、精神安定にもつながるという。
このほか、震災だけでなく、コロナ対策にもなる口腔ケアとして、唾液腺マッサージもある。大唾液腺は、耳下腺、顎下(がっか)腺、舌下腺の三つ。下あごの骨を、耳の下から親指、人さし指、中指で挟み込むようにして、あごまで滑らせる。
さらに、鼻うがいもいい。口と鼻は食物や酸素の摂取経路で、口だけでなく、鼻も汚れる。鼻を普通の水で洗うと痛くなるので生理食塩水で洗うといいという。
ウイルスには、スパイクと呼ばれる突起部分がある。それが人の細胞の表面にある受容体と結合すると、ウイルスは体内へ侵入できる。体内に取り込まれる時間は、今井さんによると、通常のインフルエンザのウイルスで20分から数十分程度。一方、新型コロナでは数時間から数日かかるという。
「新型コロナに感染しても1日2回の鼻うがいをしていると、重症化や入院リスクが8分の1になったという研究結果があります」(今井さん)
口腔ケアの方法はまだある。歯ブラシによるブラッシング、糸で歯間の汚れをかき出すフロス。さらに、ガムをかむのも効果があるという。今井さんによると、ガムをかむと唾液が出るほか、かむ力が強くなり、そしゃくする力を維持しやすくなる。また、ガムで風船を膨らますと、舌の動きがよくなると、今井さんはアドバイスする。
高齢者は、オーラルフレイルの疑いに注意してほしいと話すのは、前出の足立さん。加齢で身体機能などが衰えるのがフレイルだが、この“口腔版”で、自分で食べられなくなる直前の、ちょっと弱ってきた状態という。
具体的には、食べこぼすようになったり、硬いものが食べられなくなったりする。「こういう兆候が見られたら、歯医者で調べてもらったほうがいい」(足立さん)