口腔ケアの大切さを内科医として啓発活動するのが、みらいクリニック(福岡市)の今井一彰院長。口の中は細菌が700種類もあり、腸内細菌の300種類の2倍以上という。人は唾液を1日に1~1.5リットル分泌し、1日にのみ込む細菌は1.5兆個に達するとも。

 のみ込んだ細菌は「胃酸などでほとんど殺される」と今井さんは話す。一方、服用薬があると胃酸が抑えられ、腸内細菌になることもあるという。

 口腔細菌のなかで、多くの人が持っているのが歯周病菌だ。今井さんによると、子供のころは持っていないが、20歳くらいを境にほとんどの人に入り込んでくる。

 日本人は8割ぐらいが感染しているとされる。歯周病菌がすみ着くと、根治できず、今井さんは「ずっとオーラルケアをしていかないといけない」という。

 歯周病が進むと歯ぐきが腫れ、歯が抜け落ちることもある。それだけではない。歯周病菌が口の中の菌を変え、腸内細菌まで変えてしまう恐れがあり、血流を通じて全身に影響する。今井さんは、アルツハイマーや肥満、肝硬変、糖尿病、関節リウマチなど、さまざまな病気につながる恐れがあるとみている。歯周病菌は6種類あり、人により、すみ着いている菌の種類や数が違い、リスクも違う。

 口腔の汚れの問題は震災後だけでない。普段の生活でもコロナ禍のマスク着用で歯垢や口臭が増えているという。マスクの息苦しさからか、口を開けて呼吸することが増え、口腔環境がますます悪くなると今井さんはみている。

 菌の増殖を防ぐ口腔ケアは、どんなことをすればいいのか。マスク生活で陥りがちな口呼吸を鼻呼吸にする改善策として、今井さんは「あいうべ体操」を提唱する。食後に10回、それを1日に30回が目安という。

 あいうべ体操は(1)「あー」と口を大きく開く、(2)「いー」と口を大きく横に広げる、(3)「うー」と口を強く前に突き出す、(4)「べー」と舌を突き出し下に伸ばす。声は出しても出さなくてもいい。

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