宮城県内では、震災後11年目にあたる今年、追悼式を開催したのは石巻市と東松山市の2市にとどまった。3月11日、石巻市追悼式で献歌するシンガーソングライターの長渕剛さん(撮影/編集部・川口穣)
宮城県内では、震災後11年目にあたる今年、追悼式を開催したのは石巻市と東松山市の2市にとどまった。3月11日、石巻市追悼式で献歌するシンガーソングライターの長渕剛さん(撮影/編集部・川口穣)
この記事の写真をすべて見る

 東日本大震災から、11年がたった。

【写真】キャンドルが灯された石巻市での追悼行事

 政府主催の追悼式は震災10年だった昨年が最後で、それ以外にも10年を「区切り」として追悼式を取りやめた自治体が多い。それでも、3月11日には今年も各地で追悼の祈りがささげられた。

 11年を経て、震災を風化させずに語り継ぎ、祈りを捧げていくことは今後の大きな課題だろう。

 震災で3970人の死者・行方不明者(関連死276人を含む)を出した最大の被災地・宮城県石巻市では、今年も市主催の追悼式が行われた。

 石巻市の追悼式は、全壊・全焼地区である南浜に整備された「石巻南浜津波復興祈念公園」内の慰霊碑前で開かれた。この慰霊碑が除幕されたのは去年3月のことで、石巻市の追悼式がこの場所で開かれるのは当然初めてだ。

 この日、石巻市追悼式にはシンガーソングライターの長渕剛さんが来場、黙とうと市長挨拶に続き、献歌として「ひとつ」「愛おしき死者たちよ」「REBORN」の3曲を披露した。市の公式な追悼式にアーティストが出席するのは初めてのことだ。石巻市によると、「市民から『長渕さんの歌を追悼式で聞きたい』と要望があり、市長から長渕さんにその思いを伝えたところ、長渕さんも『追悼』と『石巻を元気づけたい』という思いを持っており、出席の上献歌いただくことになった」という。

 長渕さんは2011年末の紅白歌合戦に、復興祈念公園に近い門脇小学校から中継出演したほか、夫婦でボランティア活動に参加するなどの縁があった。この日、長渕さんは2曲を歌い終え、3曲目を歌う前にステージでこう話した。

「亡くなった犠牲者の方々、石巻の海に眠る魂たち。想像を絶する無念の涙を抱き締め、希望の道を指し示してくださったご遺族の方々。弔いの意を込めて歌います」

 この日の追悼式の出席者は、遺族代表や来賓ら約80人。例年より大きく規模を縮小した。会場周辺に集まった人の数は目算で1000人以上に及んだ。石巻市は追悼式の案内状を持った遺族代表以外も「座席はないが来場は可能」としており、純粋に追悼の気持ちで足を運んだ遺族らも多かった。

著者プロフィールを見る
川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

川口穣の記事一覧はこちら
次のページ
長渕さんの「出待ち」する人も…