ところが、センターからのテレビ中継用カメラが、タッチする前に落球していた瞬間をバッチリとらえていたことから、「何でアウトなんだ?」と大会本部や高野連に抗議の電話が殺到。ネット上でも“世紀の大誤審”として激論が交わされた。
そんな騒ぎのなか、試合は9対9の延長12回に金光大阪が1点を勝ち越したが、その裏、倉敷工も「勝ちが取り消されたうえに負けるわけにはいかない」とばかりに敵失を足場に連打でチャンスを広げると、4番・三木大和、5番・日下太希の連続タイムリーが飛び出し、今度は正真正銘の逆転サヨナラ勝ち。「いや、もうすごいことですね。ミラクルです。150パーセントの力が出ました」と中山監督を感激させた。
人間の目に“絶対”はない。時には誤審も起きる。だが、間違いを素直に認めて訂正する柔軟な対応が常識になれば、“誤審による悲劇”はもっと減らせるはずだ。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。