その19年夏以降で、皮肉にも“疑惑の判定”が勝敗に大きく影響する結果を招いたのが、昨年のセンバツ1回戦、京都国際VS柴田だ。
春夏通じて甲子園初出場の柴田は、3対3の9回2死二塁、一打サヨナラのチャンスに、村上太生輔の打球は一塁へのゴロとなったが、最後まであきらめず、執念のヘッドスライディングを見せる。
一塁はクロスプレーとなり、タイミングはセーフ。しかも、VTRでは一塁カバーに入った投手・平野順大の左足がベースを踏むより早く、村上の手がベースを触れていたにもかかわらず、一塁塁審はアウトをコールし、スリーアウトチェンジになった。
その後、柴田は延長10回の末、4対5の惜敗。もし、9回の一ゴロの判定がセーフだったら、2死一、三塁とチャンスが広がり、サヨナラ勝ちしていた可能性もあっただけに、ファンの間でも“誤審論争”が白熱。「どうしてビデオ判定を導入しないのか?」と旧態依然の体質を批判する声も相次いだが、予算的な問題もあり、ビデオ判定は今も実現していない。
サヨナラ勝ちの可能性をふいにした柴田に対し、逆転サヨナラ勝利が誤審で取り消されたのが、09年の倉敷工だ。
開会式直後の第1試合となった1回戦の金光大阪戦、倉敷工は6対9とリードされた9回裏に四球と3連続長短打で同点に追いつき、なおも1死三塁のチャンス。
次打者・山本篤貴はスクイズを試み、打球は投前に転がった。木場健志郎がマウンドを駆け降り、目の前の捕手・中島惇志にトス。タイミングはアウトに見えたが、突っ込んできた三塁走者・山形直哉にタッチしようとしたとき、中島のミットからボールがポロリとこぼれてしまった。
この間に山形は生還し、逆転サヨナラの10対9でゲームセットと思われたが、なんと、球審の判定は「アウト!」。ベンチの中山隆幸監督の指示を受けた山形が落球をアピールしたにもかかわらず、「落としていない」と却下された。早い話が「落球はタッチアウトのあと」という見解だった。