そんな投手が育成での指名になった理由は故障である。4年時は春秋ともにリーグ戦登板無しに終わり、ドラフト直前にトミー・ジョン手術を受けることになったのだ。それでも回復を見込んでソフトバンクは育成ドラフト1位で指名。プロ入り1年目はリハビリに費やしたが、今年のキャンプは順調に調整を続け、教育リーグでは最速151キロをマークするまでに回復している。手術明け1年目だけに焦りは禁物だが、ポテンシャルの高さは誰しもが認めるところだけに、近い将来大ブレイクする可能性もありそうだ。また富田、佐藤と同じ大学卒のサウスポーでは石川達也(DeNA)もオープン戦で好投しており、楽しみな存在だ。

 ここまでは大学卒の選手を取り上げたが、高校卒で面白いのが中日の上田洸太朗と松木平裕太の2人だ。ともに高校3年時には甲子園で行われたプロ志望合同練習会に参加し、粗削りながら高いポテンシャルが評価されて育成ドラフトで指名を受けている。上田は昨年二軍で12試合に登板して防御率0.79と見事な成績を残し、今年のキャンプでは一軍にも抜擢されている。高校時代は140キロ程度だったストレートが145キロを超えるまでに成長しており、早期の支配下も期待できる。一方の松木平も上田と比べるとまだ体つきは頼りないものの、伸びやかなフォームで球持ちが良く、数字以上にボールの勢いが感じられる。今年はまず二軍の主力定着を目指したい。

 野手で面白いのが今年育成ドラフト3位でDeNAに入団した大橋武尊だ。日本の高校野球を経験せずにアメリカの「IMGアカデミー」に進学し、昨年はBCリーグの茨城でプレーしていたという異色の経歴を持つ。そして、その最大の武器は抜群のスピードだ。昨年のリーグ戦では55試合で28盗塁をマーク。脚力がありながらも、当てるようなスイングをするのではなく、しっかり強く振り切ろうという意識が感じられるのもプラス材料だ。一軍のオープン戦でも2盗塁をマークするなど、早くから持ち味を発揮している。昨年はリーグ最下位の盗塁数に終わるなど、走塁面の改善がチームの課題となっているだけに、足のスペシャリストとして期待が高い。

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大橋以外にも一芸に秀でた選手