非主流派の巻き返しに岸田首相、安倍氏も黙ってはいない。

「安倍氏は菅氏と何度も会い、グループの派閥化、二階派への合流について慎重になるようにと話していた。だが、ここにきて2人には距離感があり、安倍氏より二階氏を菅氏が選んだのかもしれない。岸田首相は未だに派閥会長を退かず、岸田派のまま。それほど首相も、主流派と非主流派の動向に神経をとがらせている。最大派閥の会長として安倍氏は岸田首相を選び勝たせた。『岸田首相にはしっかりやってもらわねばなりません。それを支えるのが役目です』と派閥の会合でもよく口にしている」(安倍派所属の国会議員)

 自民党で政務調査会の調査役を長く務めた政治評論家の田村重信さんはこう語る。

「安倍氏がキングメーカーたるゆえんは、最大派閥の会長であり、岸田政権をつくったからだ。それにロシア、ウクライナ情勢で経済の不安要素が増大しており、アベノミクスの責任も問われかねず、安倍氏は厳しい状況だ。菅・二階連合の反撃を許していてはキングメーカーの座も危ういので、非主流派連合は必死で食い止めにいくはず。夏に参院選があるとはいえ、野党が体たらくで政権交代につながる要素はほぼない。それだけに、より党内抗争が激しくなる」

 一方、岸田首相はどうなのか?

「まん延防止法の全面解除に踏み切ったのは、参院選対策でもあります。ただ、もう一つの参院選対策である年金生活者への5千円給付は、茂木幹事長が主導して公明党との隙間を埋めるための配慮として浮上した話ではあったものの、それに乗った岸田首相はセンスがないと批判されています。政調会長時代に主導して赤っ恥をかいた『減収世帯への30万円給付案』の二の舞となりそうだと危惧されています。得意の外交は、最大の焦点であるウクライナ情勢に関しても、インド・カンボジア両首相との共同声明でロシアを名指しで言及できたわけでもなくチグハグです。岸田首相はベルギーのG7で存在感を発揮して参院選へ弾みをつけようと張り切っていますが…」(官邸関係者)

 夏の参院選を前に、党内政局が動きそうだ。

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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