■治療の選択肢が増え複雑に。医師の経験が治療に影響
パーキンソン病治療の基本は、薬物療法だ。パーキンソン病は、神経伝達物質の一つであるドパミンが減ることによって発症するため、ドパミンを薬で補充し、安静時のふるえや手足のこわばりといった症状を抑える。
ただし、薬物療法で症状をコントロールできても、進行を止めることはできない。進行に伴って、薬物治療だけで症状を抑えるのが難しくなる。順天堂大学順天堂医院の大山彦光医師はこう話す。
「進行すると短時間で薬の効果が切れやすく(ウェアリングオフ)、薬の量や回数を増やすと薬が効きすぎてからだが勝手にくねくねと動く『ジスキネジア』が起きます。こうした場合に手術が選択肢になります」
手術には「DBS(脳深部刺激療法)」「デュオドーパ(レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法)」に加えて、2020年に保険適用された「FUS(MRガイド下集束超音波治療)」がある。
■さまざまな症状に効果的なDBSとデュオドーパ
DBSは脳の神経回路の異常を電気刺激によって調整する方法だ。24時間持続的に電気刺激をおこなえるので、症状が安定し、薬の量を減らせる。また、症状に合わせて、電気刺激の強弱を調整できる。
デュオドーパは、小腸に直接薬を注入することで、血中濃度を一定に保ち、ウェアリングオフを解消できる。
DBSはフレームを頭に固定して頭蓋骨に穴をあけ、リード線を挿入する手術が必要となる。デュオドーパもおなかに小さい穴をあけて、胃ろうをつくる手術が必要だ。
一方、からだを切る必要がなく、患者の負担が少ないのがFUSだ。ヘルメットで頭を固定し、MRIを併用してふるえの原因となる脳の1点に超音波を集中的に照射し、ふるえを軽くする。難点は、ふるえ以外の症状には効かないこと、片側しか治療できないので、片側の症状しか抑えられないことだ。
DBSやデュオドーパは、ほかの症状にも効果がある。しかしDBSは認知症や精神症状がある人には実施できない。デュオドーパは、薬が入ったカセットを毎日交換する必要があり、それをウエストポーチやショルダーバッグにしまって携帯する。カセットの交換が難しい人、日常的にスポーツをする人には向かない。