大リーグ球団のあるスカウトは、鈴木の評価が高い理由をこう分析していた。
「持ち味がたくさんある選手だ。まずコンタクト率が高い。毎年ハイアベレージを残している。選球眼も良く出塁率が高い。足も速いのでクリーンアップだけでなく1番、2番で起用される可能性があるだろう。本塁打がなかなか伸びていなかったが、昨年量産したことで評価がさらに上がった。スイングがアッパースイングになり前半戦は試行錯誤していたように見えたが、後半戦は完全に習得して本塁打を打つコツをつかんだようにも感じた」
「あとは守備力だね。強肩は大リーグでも十分通用する。巨人からヤンキースに移籍した松井秀喜が1年目に打撃不振でなかなか調子が上がらなかった時もスタメンで使われ続けたのは守備が良かったから。鈴木も大リーグに慣れるまでは時間がかかるかもしれないが、あの守備力なら右翼のスタメンで使われ続けるだろう。常時試合に出場できれば、打率2割8分、25本塁打はクリアできる」
昨季は132試合出場で打率3割1分7厘、38本塁打、88打点をマーク。自身2度目の首位打者、最高出塁率(4割3分3厘)のタイトルを獲得し、長打率6割3分9厘、出塁率と長打率を足し合わせた強打者の指標であるOPS1・072もリーグトップだった。王貞治、落合博満に次ぐ史上3人目の「6年連続打率3割、25本塁打」も達成した。
■昨季後半に本塁打量産
過去に30本塁打を放ったのは一度だけだったが、昨季は明らかに変わった。8月まで87試合で19本塁打だったが、9月に入ると3日のヤクルト戦(東京ドーム)から6試合連続本塁打。この6試合で8本塁打を記録した。9月以降は45試合出場で19本塁打。本塁打王には1本差で届かなかったものの、昨夏の東京五輪でも侍ジャパンの4番として金メダル獲得に貢献した。
前出のスカウトが指摘したように、鈴木の武器は打撃だけではない。19年に25盗塁をマークするなど俊足で状況判断に優れる。右翼の守備でもゴールデングラブ賞を5度受賞。強肩で捕ってから速い。昨季の13補殺はリーグトップだ。
「大リーグでは守備も重要な指標です。弱肩や守備範囲の狭い選手は30本塁打を超える打力がない限り、メジャー契約を勝ち取るのは難しい。鈴木も大リーグでは中距離ヒッターに分類されますが、あの守備力なら申し分ないでしょう」(米国駐在の通信員)
(ライター・牧忠則)
※AERA 2022年4月4日号から抜粋