今年、デビュー20周年を迎える森山直太朗。「さくら(独唱)」「生きてることが辛いなら」「どこもかしこも駐車場」など、個性と普遍性を兼ね備えた楽曲を送り出し、幅広い年代のリスナーを獲得している彼は今、自らの“歌”とどう向き合っているのだろうか?
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森山直太朗の最初のヒット曲「さくら(独唱)」がリリースされたのは、2003年。もともとはデビューアルバム「乾いた唄は魚の餌にちょうどいい」の収録曲で、当時のディレクターの意見によりシングルカットされた。「桜の季節に合わせて『さくら』を出したい」というアイデアに対して森山は、「頼むからやめてくれ」と反対したという。
■桜の季節に歌うのはいやだった
「デビュー当初は“人がやっていないことをやりたい”という気持ちが強かったんです。00年代の初めはR&Bや打ち込み系の音楽が盛んだったから、あえてフォークソングで勝負しようと。まあ、実際はそれしか出来なかったのですが(笑)。なので“桜の季節に『さくら』を出したい”と言われたときは、あまりにもベタすぎると思ったし、“カンベンしてください”と食い下がりました。もちろん、当時から好きな曲ではあったんですけどね。ギターやピアノの弾き語り、アカペラでも成立する曲、つまり、いつでもポケットに入れて持ち歩けるような曲を作りたいというのが、自分のモットー。これは山崎育三郎さんに提供した『君に伝えたいこと』、AIさんの『アルデバラン』にも言えることなのですが、『さくら』はまさにそういう曲だし、歌声だけで勝負できる曲なんですよ。こんなに人前で歌わせてもらえる曲になるとは、まったく想像してなかったですけどね」
その後も「夏の終わり」「生きとし生ける物へ」などをヒットさせた森山だが、デビュー6年目に大きな試練が訪れる。2008年に発表した「生きてることが辛いなら」の<生きてることが辛いなら/いっそ小さく死ねばいい>という歌詞に対し、賛否の声が巻き起こり、一部のコンビニエンスストアでは放送禁止にまでなった。