時代の空気を感じ取り、自分自身の歌と向き合ってきた森山直太朗。ニューアルバム「素晴らしい世界」は、コロナ禍で経験したこと、感じたことが生々しく反映された作品だ。
「コロナによって、様々な社会的な問題が露わになりましたけど、それはずっと前から存在していて、見て見ぬふりしていただけなんですよね。目の前の豊かさや利便性、効率の良さに目がくらんでいたし、“今さえよければいい”という価値観によって、失ったものがたくさんあるとも思っていて。エンタメや音楽って立場が弱いんだなということも痛感しました。中途半端なことをしているとアッという間に淘汰される状況ですけど、それはもしかしたら良いことなのかもしれないですね」
■コロナに感染したことが音楽にも影響した
“大切な人に愛情を伝えよう”というストレートな思いを込めた「愛してるって言ってみな」、父親に対する愛憎を綴った「papa」、そして、彼自身が新型コロナウイルスに罹患したことをきっかけに生まれた「素晴らしい世界」。森山自身のリアルな感情が刻まれた楽曲が多いのも、本作の聴きどころだ。
「『愛してるって言ってみな』はかなり前から存在してたんですが、あまりにも率直だし、“こんな曲を出したら恥ずかしいな”と思ってたんですよ。でも、コロナに罹ったときに僕自身がこの曲に励まされて、“四の五の言わず、いいと感じた曲を出すべきだ”と。アルバムには『boku』という曲もあるんですが、これまでで一番、僕自身に近い作品になったと思います」
6月から始まる全国ツアーの公演数は、何と100本。初日の公演は、東京・吉祥寺のライブハウス「曼荼羅」だ。吉祥寺は、アマチュア時代に路上ライブを行っていた井の頭公園がある思い出の土地。
「自分の原点である吉祥寺からツアーをはじめたかったんですよね。“100本はすごいですね”と言ってもらえるんですけど、うちの母親(森山良子)の世代は今も年間100本くらい当たり前。もっと効率的なやり方もあるだろうけど、“俺がやらねば誰がやる”と勝手に背負っちゃってます(笑)」
20周年に対して、「“よくここまでやってきたな”とも“20年という月日に値する成長ができたのか?”とも思うけど、やっぱり通過点ですね」という森山。歌に向かい合う日々はまだまだ続いていきそうだ。
(森 朋之)
森山直太朗(もりやま・なおたろう)/1976年生まれ。東京都出身。大学時代より本格的にギターを持ち、楽曲作りを開始し、ストリート・パフォーマンス及びライブ・ハウスでのライブ活動を展開。2001年にインディーズレーベルから直太朗名義でアルバム「直太朗」をリリースし、2002年10月にミニアルバム「乾いた唄は魚の餌にちょうどいい」でメジャーデビューを果たす。その後コンスタントに楽曲制作とライブ活動を行う傍ら、他アーティストへの楽曲提供なども行う。2020年にはNHK連続テレビ小説「エール」での好演が評判となった。2022年3月16日に20周年記念オリジナルアルバム「素晴らしい世界」をリリース。10月にはメジャーデビュー20周年を迎える。
20周年オリジナルアルバム「素晴らしい世界」特設サイトhttps://sp.universal-music.co.jp/naotaro/20th/
“全国一〇〇本ツアー”森山直太朗20thアニバーサリーツアー「素晴らしい世界」ツアー特設サイト
https://naotaro.com/subarashiisekai/