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平間さん初の大規模な回顧展が4月2日から京都駅に隣接する「美術館『えき』KYOTO」で開催される。テーマは「音楽」。写真展案内にはこうある。
<タワーレコードのキャンペーン「NO MUSIC, NO LIFE.」をはじめ数多くのアーティスト写真を撮影し、“音楽が聴こえてくるような躍動感あるポートレート”で写真界に新しいスタイルを打ち出したと評価される写真家、平間至>
展示作品は約250点。手渡された図録にはそうそうたるミュージシャンの写真がずらりと並ぶ。AI、あいみょん、石川さゆり、井上陽水、忌野清志郎、オダギリジョー、Mr.Children、YMO、和田アキ子……。
■カメラは楽器
筆者が図録を見終わると、「第1印象はどうですか?」と、平間さんにたずねられた。
「意外でした。単に有名ミュージシャンの写真がたくさん並ぶものと思っていました」
こう答えると、「そんな面白くない写真展を想像していたんですか?」「はい」「正直ですねえ」。平間さんはあきれ顔だ。
「それじゃあ、『ああ、誰々が写っている』って、『証拠写真』で終わっちゃうじゃないですか。ミュージシャンを知らない、例えば、外国の人が見ても楽しめるようなものにしないと、展覧会を開く意味がない」
展示作品のセレクトはキュレーターの佐藤正子さんにほぼ任せたという。
「ぼくがミュージシャンをいちばん撮っていた1990年代から2000年代初頭は、佐藤さんがちょうどパリにいた時期なんです。彼女はそのころのミュージシャンをぜんぜん知らなかった。だから、純粋に面白い写真を選んでもらえた」
作品の半数以上はミュージシャンを写したものだが、ダンサー・田中泯の「場踊り」を追ったシリーズや、東日本大震災前後に撮影した「光景」、現在の活動の中心である「平間写真館」で写した作品もある。
「つまり、『音楽』がテーマって、ミュージシャンが写っている、という意味ではないんです。ぼくは、写真自体が音楽を奏でるようでありたいと、いつも思っています」
平間さんは撮影の際、カメラを楽器のようにとらえているという。
「シャッターの音だけでなく、ストロボの発光や充電のサウンドも含めて、撮影のリズムを奏でていく。そのリズムによって、お祭りやダンスをするみたいに相手の気持ちをどんどん解放していく」