なぜ双樹だけ? なぜもっと早くに見つけてあげられなかった? 第一、早すぎだよ。

 私はぼろぼろ泣きました。ふだん涙を見せない夫も泣きました。ボランティアさんも悲しんで下さり、沙羅も、ワオワオーと、双樹を探すように大声で鳴きました。

 双樹の分まで長生きをしますように

  双樹、享年2。家に来てまだ7カ月でした。振り返って考えると、数カ月を熱く濃く駆けぬけていった感じです。

沙羅(左)に寄り添う、双樹に似た杏樹(提供)
沙羅(左)に寄り添う、双樹に似た杏樹(提供)

  いなくなった後、悶々とし、悔やんだりぼんやりしたり。もうどうしようもなく双樹の不在がさみしくて、私は保護サイトをのぞきました。すると、双樹に横顔がよく似た雌の子猫がいたのです、仮につけられた名はコスモス。

  実は、双樹が亡くなった時、家の庭に咲いていた花を摘んで棺に入れました。たくさんのアジサイやミニひまわり。そして、一輪だけぽつんと咲いていたきれいなピンクのコスモスを口元におきました。だから、コスモスという猫の名を聞いて、はっとしたのです。

  愛猫が亡くなってすぐに次の猫を迎えることには、賛否両論あるかもしれません。でも、私はその子に縁を感じたし、すがりたくもなりました。

  そして双樹が旅立った3カ月後の10月、コスモスを正式に家に迎え、改めて、「杏樹」という名を付けました。双樹から一文字もらって。

  こういうわけで、今、我が家には、ルネ、沙羅、ガル、そして杏樹の4匹がいます。写真の双樹もあわせれば、5匹ですね。

上から、ガル、沙羅、杏樹、ルネ。現在の4ショット(提供)
上から、ガル、沙羅、杏樹、ルネ。現在の4ショット(提供)

  今も私は夫としょっちゅう双樹の話をします。

「あの子、面白かったね」とか「シャー猫の粋を超えた個性的な子だった」とか「シャーでも可愛かったよ」とか。

 そして杏樹にはこう言っているんです。「どうか双樹の分まで長生きしてね」と。

  双樹、過ごした時間は短いけど、君のことはずーっと忘れないよ。

昨年3月、家に慣れてきた頃の双樹(提供)
昨年3月、家に慣れてきた頃の双樹(提供)

 (水野マルコ)

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水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

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