高校時代、キーボードを弾いてデモテープをつくり、ジャケットに載せることを想定して写したセルフポートレートをつけて音楽事務所に送った。すると、「写真はいいね」と、褒められた。
その後、学校で写真を学ぶことも考えたが、東京綜合写真専門学校の校長に作品を見せると、「そこそこ基本的な技術は身についているし、学校に通わなくてもいいんじゃないか」と、言われた。
06年、学校に行くつもりでためたお金で初の写真集『Lower Heaven , Higher Hell』を出版。それはカンボジアのアンコールワットを主に写したもので、撮影した写真を透明なOHPフィルムにカラーコピーして、2枚の写真を重ねてプリントした。
「アンコールワットにいると、天国のような気がするんですけれど、経済は貧しくて路上で生活している人もいた。天国感のある写真と、地獄感のある写真を重ね合わせて作品をつくった」
■「父親もちょっとうれしいんじゃないかな」
イスラエルに入国した際、空港のX線検査装置で感光したフィルムの画像と、福島第一原発事故後の地元の風景を重ねてつくった作品「broken hallelujah (composed by fukushima)」も斬新だ。
その震災の年の暮れ、がんを患っていた父親が亡くなった。
「死ぬ間際、『明美の写真はあの世を撮影しているみたいで、怖くて嫌だ』と言って、作品を見てくれなかったんです。今回、そう言っていた父親が写した写真を、娘がアレンジしたとはいえ、銀座のいい場所で開く写真展に飾るわけで、父親もちょっとうれしいんじゃないかな」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】大原明海写真展「アラバスターの部屋 Safe in their alabaster chambers」
銀座奥野ビル306号室(東京都中央区銀座1-9-8) 4月11日~4月17日