漫才界のトップランナーとして走り続けるオール巨人さん(70)。「M-1グランプリ」の審査員としても存在感を見せていますが、先月には著書「漫才論」を出版しました。今、改めて漫才についてつづった意味。そして、芸人が売れるために必要なものとは。
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去年70歳になったタイミングでね、一つの節目でもあって本のお話を頂戴したんです。
ま、タイトルが「漫才論」となると大げさになるんですけど(笑)、改めて考えた時に「漫才の本を出すんやったら今かな」と思ったんです。
というのはね、若い人の漫才もまだ今は分かる。だからこそ、ずっと「M-1」の審査員もさせてもらってきたんですけど、そこにね、ちょっとずつですけど「ん?」というところが出てきたんです。
いや、笑いの仕組みとしては分かるんですよ。なぜ笑いが起きるのか。ただ、それをシンプルに自分自身が面白いとは思えなくなっているところが出てきた。それと、ネタの中に今のゲームの話題なんかが出てくると知識として追いつかないところも出てきた。
100で言うたら2とか3くらい、ポツポツと「ん?」が出てきた。恐らく、その割合がこの先増えていくんでしょうし、そうなると漫才について何か残すなら今だろうなと。
僕の同級生なんかは、若い人の漫才を見ても90%は「分からん」と言ってます。でも「M-1」の審査員をする以上は、もちろん、そういうわけにはいきませんから。
アメリカンドリームやないけど、「M-1」は優勝したら一夜にしてスターになります。多少なりとも、人の人生を決めるところにいるわけですから、CS放送でも何でも若手がネタをやってるものは手当たり次第に見ています。もう審査員をしなくなったら、正直、ここまで見ることはないと思います。リアルな話。
松本(人志)君なんかは、初見でいきたいというタイプなんですけど、僕はいろいろなものを見ておいて総合的に判断したいと思うタイプなんです。こればっかりは性格やろね。