感染者が出れば速やかに追跡情報が公開されて毎日1万人規模でPCR検査が行われ、小さなロックダウンを繰り返して、感染拡大を抑え込んできました。その甲斐あってか、同州では長らくパンデミック前とほぼ変わらない生活を送ることができていたのです。経済的観点で他州から非難されたマクガワン西豪州首相ですが、住民からは高く評価されていました。しかしワクチン接種が進むと次第に州内でも不満が高まり、州首相はついに今年3月に入境制限を大幅に緩和。それに伴い感染者が激増し、マスクの着用義務づけや集会の人数制限が行われるようになりました。今は増加のペースが落ち着いてきたため、制限は少し緩和されています。基本的には日本と同じことに気をつけて生活していればいいのですが、不安はゼロにはできません。日本に戻る際には、2時間並んでドライブスルーPCR検査を受けました。次にパースに帰るときの状況はどうなっていることやら。一歩ずつの前進ですが、長い長いトンネルの先に、早く光を見たいです。
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
※AERA 2022年4月25日号