19歳で足を運んだ皇居から始まった皇室との縁は、すでに3年半になる。阿部さんの“本業”は、大学生だ。
「コロナでリモート講義が多いので、勉強の隙間を見つけては、足を運んでいます。学業との両立は大変なこともありますが、じっとカメラを構えつづけていると、皇族方の表情の違いがなんとなく見えてくることもあるので、楽しいです」
メディアではなく一般の皇室ファンである「おっかけ」、しかも阿部さんのような若い学生だからこそ引き出せるものもある。皇室メンバーの柔らかな表情だ。
22年1月に撮影した写真には、上皇さまが皇居に入る瞬間に見せた優しい笑顔が写っている。おつきの侍従が大事そうに抱える鞄は、ご研究用の資料が詰まっているのだろうか。皇室好きにとっては、このようなちょっとした発見も嬉しいものだ。
もっとも、阿部さんの関心は背景と上皇さまの取り合わせだ。
「冬で緑がなく、枯れ葉を背景にした撮影も挑戦してみました。上皇さまは、渋いオレンジ系の色もお似合いですね」
あらためて実感するのは、上皇ご夫妻の人気ぶりだ。譲位して引退生活を送っていても、阿部さんはおふたりに対する人びとの敬愛を実感する。
「ご退位されてからは、こぼれるような笑顔を見せてくださるのが印象的です」(阿部さん)
いまどきの大学生である阿部さんが、60歳以上も年齢が離れた上皇ご夫妻に惹かれる理由はどこにあるのか。
「実は、上皇さまは表情がとても豊かなのです。お元気のないお顔のときもありますし、ちょっとご機嫌が悪いように見える表情だと感じることもあります。保育園や幼稚園など子どもたちが沿道で見送ることもあるのですが、そんなとき、上皇さまは驚くほど、嬉しそうなお顔をなさるのです」
阿部さんが関心するのは、美智子さまの気遣いだ。
「上皇さまのお顔に重ならないように、そして常に上皇さまの手より下の位置でご自身の手を振っていらっしゃる。もっとも令和に入ってからは、目立たぬよう配慮されているのか手は振らずに会釈が多い。でも、沿道に子どもたちがいるときは、それは嬉しそうに車の窓の縁に手をかけてニコッとなさるんです」