西欧に流れていこうとするウクライナに対するいら立ちと、それに対する制裁という側面もあったと思います。
そしてプーチン氏自身、ロシア正教に帰依しています。ロシア正教を守るためには、自分が何とかしなければという使命感に駆られているはず。世界を敵に回してもです。ロシア正教を守るためにはやり抜こうと思っているはずです。
宗教戦争であるのなら、宗教指導者同士が話しあえば戦争は終わるのでは、という意見もあります。しかし、そもそもカトリックとロシア正教は対立関係にあります。また今回、ロシア正教の最高指導者の総主教はプーチン氏のウクライナ侵攻を支持しています。仮にカトリックの最高指導者である教皇が総主教に何か言えば、火に油を注ぐことになりかねません。
戦争の根底に宗教がある以上、争いの根が深く、泥沼化する可能性を秘めているという認識でいる必要があると思います。とにかく今は、プーチン氏に逃げ場所を残しておくことです。
「神の代理人」という統治者観は、ロシアという国が存在する限り存在し続けるでしょう。プーチン氏が去った後、神の代理人としてふさわしい指導者が出てくれることを願っています。
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年4月25日号