その後、僕はデザイナーから画家に転向するが、池田さんも陶芸を始め出した。そして、間もなく彼も「画家で終わらなきゃ、芸術家になれない」と言いだし、二人が同じ境地に立ち、やっと画家の友人ができたかと思っていた矢先、彼は急逝してしまった。彼の絵画作品は数点しか残っていないが、あっちに逝ってしまった彼は、こちらでは画家になりそこねたが、負けん気の強い彼だ、僕があっちで彼に会った時は、「こっちは肉体はない。だからコシアンもツブアンも、意味ないよ」と言いそうだね。
横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰
※週刊朝日 2022年4月29日号