対抗馬の一番手は、大東文化大だ。過去に2大駅伝の優勝経験はないが、『全日本』で5年連続の2位、『富士山』でも4年連続の2位に入っている実力校。1年時からチームを引っ張ってきたエース・鈴木優花は卒業したが、その他の主力たちはチームに残っており、2019年の世界選手権3000m障害で日本代表の実力を持ちながら昨年の2大駅伝を故障で欠場した吉村玲美(4年)が万全のコンディションを整えた上で“今年こそ”を狙う。さらに、昨年から主将を務める飛田凜香(4年)を中心に復権を目指す西の雄・立命館大、保坂晴子(3年)、山崎りさ(2年)ら実力者を多く揃える日本体育大も上位争いは間違いない。

 そして、不破聖衣来(2年)を擁する拓殖大である。2016年に五十嵐利治監督を招聘して女子駅伝部の強化をスタートさせ、2018年の初出場から4年目の昨年に『全日本』で過去最高の3位。『富士山』でも6位に入った。現状は「不破の出来次第」というチームではあるが、昨年の『全日本』に出場したメンバー全員が今年も在籍しており、まだ創部7年目というチームであることも含めて成長の余地は十分にある。今後、不破の成長とともに、不破以外の面々がどこまで自己記録を伸ばすことができるか。不破は昨年の『富士山』のレース後に「自分でトップに立つという目標を達成できなくて残念」と振り返ったが、今年こそは一時的にでも“首位奪取”を実現させたいところ。そのためにも、チームとしては好位置で不破に襷を渡したい。

“絶対王者”名城大に対して、大東文化大、立命館大、日本体育大、そして拓殖大がどこまで迫れるか。間違いなく言えることは、不破聖衣来というニューヒロインの登場によって大学女子駅伝への注目度が上がり、他の選手、チームにとっても大きな刺激になっているということ。その傍ら、男子大学駅伝では『箱根駅伝』が長い歴史の中で数々のドラマと名選手を生み、近年では大迫傑などが「箱根から世界」を実現させて価値をさらに高めた。女子大学駅伝も同様に、世界と戦える可能性を持つ魅力的なランナーが揃っている今、これまで以上の“熱戦”が期待できる。10月30日の『全日本』と12月30日の『富士山』までにどの選手が台頭してくるのか。不破の“異次元の走り”とともに、スタートの号砲が今から待ち遠しい。