ピョートル:先ほど津田さんは「結果論」という言葉を使われましたけれども、経営者や実業家には素晴らしい結果が出たときに「運」という言葉を使う人もいます。はやぶさ2がこれほどまでの成果を挙げることができた要因は、津田さんが振り返ってみたときに、それはスキルなのか、それともラッキーもあったのか、どうお考えですか?
津田:はやぶさ2は国家事業なので、「計画してできました」という言い方をするんですけれども、いろいろな局面で「運に恵まれた」という実感はあります。そもそも宇宙探査というのは人間の予想通りにすべてが上手くいくはずがないんですね。
技術的・科学的という意味ではチームメンバーは成功確率100%のことをやっているわけではないので、やれることをすべてやった後の最後の1%は神頼みなんです。だから「運」に対しては謙虚でなければいけないと思っていて、本当に神社へ行ったりもします(笑)。
一方で、買いかぶりすぎかもしれないですけれども、メンバーは人類の代表として未知の天体に行くわけですから、そこで恥ずかしくない所業をしなくてはいけない。予想外のことが起きても、全力で事に当たれるためにチームづくりをしたという感覚があります。
■難題に挑むときに欠かせないアプローチ法
ピョートル:ほとんどの業界や分野に言えることですけれども、どうすればいいかわからない状況で、上手く解決策を見つけられた人が成功し、成長していきますよね。そこでお聞きしたいのは、「これは困った、わかんない、次にどうしよう?」という壁にぶつかったときに、津田さんたちは何をしたのかということ。壁を乗り越えるコツみたいなものはあったんですか?
津田:はやぶさ2の場合はリュウグウのサンプルを採取するという明確な目標があって、最大の困難は安全に着陸できる場所が見つからないということでした。探査機の設計図通りのスペックではとても解決できない問題が、リュウグウに到着してからわかってしまった。
そのときに「着陸」という作業に必要な問題を分解して考えてみると、たとえば小惑星の地形を知らなければいけない、重力を知らなければいけない、探査機のスペック以前に設計そのものはどうなっているのか、着陸に求められる安全とはどういうことなのか……と、問題を細分化できたんです。