そのプロセスは「問題を解く」のではなく、「問題をつくる」という感じですが、適切に問題をつくれたときは答えが見えやすいんですね。答えというのは必ずしもリーダーの頭の中から出てくるものではないので、私がリーダーとして努力したのはチームの中に問題設定ができる場をつくることでした。
ピョートル:なるほど。では、ちょっと意地悪な質問をしますけれども、ここに20代の男性がいて、結婚したいけれどもいい出会いがなくて、どうしたらいいのかわからない。という問題に対して、津田さんならどういうステップを踏んで、どうやって解決しますか?
津田:私には小惑星着陸よりもむずかしい(笑)。
まったく想定していなかった問題ですが、細分化するという話に合わせると、まず「結婚相手が見つからない」という問題を「自分の問題」と「環境の問題」に分けることでしょうか。で、自分の問題を解決するには、身だしなみを整えるとか。環境のほうは、日頃の社会との接点を増やすとか。あとは技術的に、それぞれの専門家に相談してみる。
そうやって問題をどんどん細分化して、検証を繰り返して、積み重ねていけば、必ずしも答えに結びつかなくても、答えに近づくことはできると思います。即効性はないけれども、時間をかけてじわじわ答えをあぶり出すようなイメージですかね。
■「はやぶさ2」が成功した理由
ピョートル:なぜはやぶさ2が成功したのか、よくわかりました(笑)。要は、「仮説を立てて検証していきましょう」ということがチームの中に浸透しているわけですね。
一般の会社では、社員に対して「前向きな失敗はOK」という経営者がたくさんいて、もちろん意図は正しいんですけれども、現場レベルでは失敗は降格やクビといったリスクでしかないと考えます。ところが、「失敗」を「仮説を立てて検証した結果」というポジティブな言葉に置き換えると、実際に社員たちがおもしろい失敗をたくさんしてくれるという場面を僕はいままで何回も見てきました。はやぶさ2は、まさにそういう仕組みがチーム内にできていたんだろうなと思いました。
津田:トライ・アンド・エラーで「これはやったけれども上手くいかなかった」というほうがリアリティがあるし、「次はもっと深く考えるぞ」という意識につながると思うんですね。結果として「失敗」であっても、選択肢を減らして成功への道筋が絞られていくのであれば、失敗を経験することは重要なプロセスだと思います。