僕が以前いたグーグルには、生産性の高いチームの特性を明らかにした「プロジェクト・アリストテレス」という調査・研究があります。そこでの結論は5つあって、「チームの仕事に『Meaning(意味)』を見出していること」はその一つです。あとの4つは、「チームの仕事が社会に対して『Impact(影響)』をもたらすと考えていること」「チームに対する『Dependability(信頼性)』が高いこと」「チームの『Structure(構造)』が明瞭であること」、そして「チームの『Psychological Safety(心理的安全性)』が高いこと」でした。

 はやぶさ2規模のプロジェクトですと、予算も膨大ですし、失敗が許されないというプレッシャーでたいへんなストレスがあったかと思います。そこで僕が津田さんにうかがいたかったのが、メンバーのみなさんがいかにして心理的安全性を保っていたのかということです。

■いかにして心理的安全性を高めるか

津田:私が重要視したのはチームメンバーに失敗経験を持ってもらうことでした。通常、宇宙ミッションでは「絶対に失敗するな」と散々言われるんですけれども、失敗から学べることはたくさんあります。打ち上げからリュウグウ到着までの3年半の間に安心してメンバーが挑戦できる場所、言い換えれば失敗できる場所をどうやって確保するかということに注力しました。

 その一つの仕掛けが訓練で、シミュレーターを使った着陸訓練を48回やって、22回「墜落」しています。この失敗経験があったからこそ、本番で不測の事態が起きても消極策を取らず、教科書には載っていない大胆な解決策を次々に編み出すことができたんです。

ピョートル:それはまさにメンバーの心理的安全性を守りながら、よいアウトプットを生み出す仕組みですね。

 グーグルにも「ビィ・スクラッピー(Be scrappy)」という合言葉があります。スクラッピーとは「スクラップ=くず、残り物」のことで、ちゃんとしたものではなくてもいいから、とにかくやってみるという考え方です。エンジニアリングチームは、とりあえずプログラムをつくってみて失敗し、そこからみんなで学習するという、いわば「早めに失敗する仕組み」の中で動いています。

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