津田雄一著『はやぶさ2のプロジェクトマネジャーはなぜ「無駄」を大切にしたのか?』※Amazonで書籍の詳細を見る
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津田:はやぶさ2には若いメンバーもたくさんいて、若手らしい自由な発想から生まれてくるアイデアに私も期待をしていました。彼らは突飛だけれども可能性のあるアイデアをたくさん思いつきます。

 だけど、それを提案するのを怖がるんですね。なぜかというと、「提案が通って失敗したら自分のせいだ」と考えてしまうからです。そこで私が心掛けたのは、「発案」「評価」「責任」の所在を明確にすることでした。

 個々のメンバーが自由にアイデアを出し、出てきたアイデアをチームが評価し、結果責任はリーダーが背負う。<アイデアは個人><評価はチーム><責任はリーダー>という構造をしっかり見せていこうと。そこにたどり着くまでには私も試行錯誤の繰り返しでしたが、「結果論」としてメンバーたちの心理的安全性を保てるチームづくりができたのではないかなと思っています。

■若手が育つ指示の出し方

ピョートル:結局、心理的安全性が保てるからこそ、妥協を許さない率直さも発生するということですね。プレッシャーをゼロにするというわけではなくて、ネガティブなプレッシャーをなくして、建設的な意見の対立をいかに推奨していくかということで、これはグーグルの心理的安全性の考え方と共通します。

 心理的安全性があれば、メンバーを挑発することもできますよね。僕はチーム内でのぶつかり合いがとても大事だと思っていて、ぶつかることによってより強いアイデアを選び、それを拡大していくのがポイントだと考えていますが、津田さんはいかがですか?

津田:おっしゃる通りで、意見のぶつかり合いは重要だと私も思っています。でも、むずかしいですよね。小惑星探査は「答え」のないミッションですから、どっちの意見がいいのか、必ずしも冷静に選択できないところもあります。とくに技術者集団だと、各々のこだわりもあったりして。

ピョートル:エンジニアは頑固なところもありますね(笑)。

津田:「こっちであるべきだ」とか、「これが一番いいアイデアだ」とか、そういうこだわりが仕事への情熱につながることもありますので、意見の対立をけしかけながらも、どちらの気持ちも潰さないように気をつけました。

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