舞台上空に赤い車が舞い、ショービジネスのきらびやかな世界が描かれる中で、コウイチが「僕らの夢は終わらない」と歌う。コウイチとショウリの激しい殺陣はもちろん、カンパニー全体での大人数での殺陣も見どころだ。

 1幕の終盤ではコウイチが“Show must go on!”の本当の意味と対峙する。「つまずき、立ち止まって新たに踏み出す勇気。そこに答えがあるはずだ。何があってもショーを続けなければいけない」と決意を新たにする。

やっぱりぼくはドM

 2幕では、コウイチが生と死の狭間を彷徨(さまよ)うさまを描いた「Dead or Alive」があり、かつてのコウイチの映像を巧みに挟み込みながら、ショウリやカンパニーのコウイチを失った心情が描かれていく。カンパニーの気持ちが徐々にひとつになっていき、そこにコウイチも加わり、「エンターテインメントは永遠に生き続ける」という堂本自身の信念を体現するような芝居が展開される。赤い幕をまとっての舞台上空の華麗なフライングも素晴らしかった。

 本編と「Eternal」両方を観ることにより、「SHOCK」に込められた物語やメッセージがより強く伝わってくる。

 コロナ禍を機に、国内での大規模なライブ興行はストップした。その後、無観客の配信ライブが主となる時期があり、徐々に配信ライブと有観客ライブ両方を行うというハイブリッドに移行していった。その状態がこの先もしばらく続くと予想されている。

 そのなかで、今回の「SHOCK」は前述した通り、同時期に全く違う内容の公演を配信と劇場での上演で届けるという意味で、異例の試みだ。

「みんながてんやわんやの状態で、誰がこんなことをやろうと言い出したのか(笑)。やっぱり、ぼくはドMなんです。追い込まれて燃えるんです」

 そう、堂本は笑顔で語った。

夢と希望を感じさせながら、悲しみも痛みもあり、ショービジネスの光と影を鮮烈に描いた二つの新しい「SHOCK」。20年以上にわたって最前線を走り続ける堂本光一という希代のエンターテイナーの新境地を、ぜひ見届けてほしい。

(ライター・小松香里)

AERA 2022年5月2日号-9日合併号