モリコーネは「妻がいいと思った曲はだいたい監督はみんなOKする」と言っています。私も生前の父も、音楽をリリースする前に母に必ず「これどう?」って聞くんです。アカデミー賞の授賞式で「これは妻の賞でもあります」という姿を素敵だと思いました。自分の才能に溺れることなく、一番そばにいる大事な人の意見を聞いて誠実に音楽を作ってきた。だからこそみんなに愛される音楽を生み出せたのだと。

 あれだけ偉大な存在になってもなお探究を続ける姿に、自分もそうありたいと思いましたし、なによりその生き方に「これでいいんだよね」と励まされる気持ちもありました。この世界では「悲劇や破天荒な人生からしか音楽は生まれない」と言われがちで、私も「そうでないと、音楽を生み出せないのだろうか」と疑問を抱いたことがあったんです。でもモリコーネは苦労もしたけれど、家族を大切にし、誠実に生きてきた。そして父も同じだったなと。ミュージシャンは真面目で誠実であっていい。モリコーネと父の姿を思い浮かべながら、これからもがんばっていこうと思います。

週刊朝日  2023年1月27日号

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