阪神在籍時の新庄剛志(写真提供・阪神タイガース)
阪神在籍時の新庄剛志(写真提供・阪神タイガース)
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 3年ぶりに観客の人数制限が解除された今季のプロ野球。声出し応援の復活はまだ先になりそうだが、球場に詰めかけたファンが手拍子で応援するスタイルもすっかり定着し、熱戦を盛り上げている。

【写真】コロナ前の巨人の応援席の様子=2019年10月20日撮影

 その一方で、過去には、成績不振に不満を抱いたファンが、選手の応援をボイコットする事件も一度ならず起きている。

 オールスターの晴れ舞台で応援をボイコットされたのが、阪神時代の新庄剛志だ。

 1997年、新庄はオールスターファン投票で外野手部門2位の43万296票を獲得し、3年ぶり2度目の出場をはたした。

 だが、この時点で、打率はセ・リーグの規定打席到達者33人中最下位の.215、三振も巨人・清原和博と並ぶリーグワーストの86と極度の打撃不振で、大手を振って出場できるような成績ではなかった。

「ファンが投票してくれたのは、オールスターで僕のプレーを見たいんだなと思いました。恥ずかしいと思うんじゃなくて、堂々と出たいと思います」と前向きにとらえた新庄だったが、選出に納得のいかない阪神応援団は事前に協議し、オールスターでの応援ボイコットを決めた。

 そして、7月23日の第1戦、大阪ドームのスタンドには「新庄剛志 そんな成績で出場するな 恥を知れ」の横断幕が掲げられ、0対0の3回に新庄が打席に立つと、鳴り物応援がピタッと止まった。新庄が3球三振に終わると、グラウンドにはメガホンが数個投げ込まれた。さらに新庄は5回1死一、二塁のチャンスでも三ゴロ併殺に倒れ、2打数無安打でベンチに下がった。

「いいところだったんですけど、ダブルプレーは仕方ないです。自分の打撃をさせてもらえませんでした」と振り返った新庄だったが、“帰れコール“まで浴びせられる一部のファンの仕打ちに、内心は身を切られるような思いだったはずだ。

 06年の現役引退会見でも、「野球人生で一番心に残っている出来事」を問われた新庄は「阪神時代、成績が悪いのに選ばれたオールスターで、ペットボトルを投げられ、トランペットとかが鳴らなかった。ショックな気持ちは今でも忘れられない」と述懐している。

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