「免疫チェックポイント阻害薬には副作用がないと思われがちですが、そんなことはありません。免疫を活性化する薬なので、免疫が過剰に活性化されて正常細胞を攻撃してしまうこともあります。とはいえ従来の抗がん剤に比べて副作用の発生率は低く、重篤な副作用の発生率は2~4割程度。ただし副作用の幅は広く、副作用対策として循環器内科や膠原病内科など他の診療科と連携が必要になることもあります」(佐々木医師)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

■薬が使える患者と使えない患者がいる

 がんの種類にもよるが、薬物療法に使える薬剤は年々増加している。しかし患者一人ひとりの選択肢が広がったわけではないと佐々木医師は言う。

「分子標的薬の場合、ドライバー遺伝子の種類や組み合わせによって使える薬はほぼ決まります。ドライバー遺伝子がない場合には免疫チェックポイント阻害薬の適応かを調べ、適応でない場合には従来型の抗がん剤の中から最適なものを選びます。治療薬が多いとはいえ、一人の患者さんが使える薬は限られます。だからこそ『分子標的薬が使えない』と落胆する人もいますが、『あなたに最適なものは従来の抗がん剤です。いっしょにがんばりましょう』とお伝えします」

 多くの薬剤の中でどの薬を選択するのかは、各がんの『診療ガイドライン』に推奨されている。東京大学医科学研究所病院の朴成和医師はこう説明する。

「最新の標準治療は、過去の標準治療とタイトルマッチのような勝負をして勝ち抜いたものですから、一番よいと考えられている治療方法です。標準治療はどの病院でも受けることができるはずですが、実際には患者さんの年齢や仕事、生活のスタイルを考慮し、副作用についても考えていくと、標準治療をそのままやればいいということにならない場合もあります。十分な説明と臨機応変な対応力、治療開始後の修正力のようなものが医師やスタッフにどれだけあるかが病院の力と言えるかもしれません」

(文・神素子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より