惜しまれ閉店「名阪上野ドライブイン」(三重)/
営業最終日には多くの客が駆けつけた
惜しまれ閉店「名阪上野ドライブイン」(三重)/ 営業最終日には多くの客が駆けつけた

 大型のショッピングセンターや「道の駅」といった新しくて便利な施設に押され気味のドライブイン。だが最近は、個性的な店構えやサービスが改めて見直されている。レトロな雰囲気を味わえる場としても魅力的だ。注目のドライブインを紹介しよう。

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 55年間のご愛顧ありがとうございました──。

 三重県伊賀市の名阪上野ドライブインが3月末、閉店した。店は1965年に開通した名阪国道沿いにあり、翌66年9月に開業。伊賀忍者で知られる伊賀市にあることから「忍者ドライブイン」と呼ばれ、国道を通るドライバーや地元の利用客に長年親しまれてきた。

 かつては関西方面から来る伊勢神宮への団体旅行を中心に、大型バスや家族連れでにぎわった。90年代には年8万台のバスが来たこともあったという。

 しかし、旅の形はやがて、団体旅行やバスツアーから個人旅行が主流になった。順次開通した新名神高速道路の影響で、車の流れも変わった。コロナ禍が経営悪化に追い打ちをかけ、運営会社の三交興業(三重県亀山市)は今年1月にやむなく閉店を決めた。

 最後の営業日と聞いて駆けつけた70代の女性は「子どもを連れて来たこともあるので残念。孫ももう大きくなったし、これも時代の流れかな」と名残惜しそうに建物を見回した。

 ドライブインと聞いて、その姿をぱっと思い浮かべられる人は少なくなったかもしれない。「そういえば最近見かけないな」と感じる人もいるだろう。

 ドライブインは一般的に、国道や県道など主要な幹線沿いや、観光地周辺で食事やおみやげ、休憩場所を提供する施設を指す。トラックや観光バスがとめられる大きな駐車場があるのも特徴だ。明確な定義はなく、店名に「ドライブイン」と銘打つところもあれば、食堂や土産物屋の形で運営する店もある。

 経済成長に伴って60年代から急速に進んだ自動車の普及や団体旅行ブームに乗り、全国各地に相次いでできた。業界団体「日本観光施設協会」(旧・日本ドライブイン協会)によれば、ピークの70年代には全国で1千軒を超えたという。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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