肥満以外の心配もある。

 厚労省はタンパク質の摂取量の上限は示しておらず、過剰摂取による健康被害も今のところ報告されていない。だが、余分なタンパク質は肝臓で脂肪や尿素に変わる。さらに尿素は腎臓で尿中に排出する必要がある。長期の過剰摂取により臓器に負担がかかり、将来的に何らかの悪影響を及ぼすのではないかとの指摘もある。

 では、どのように摂取するのが望ましいのか。

 中井教授によると、摂取のタイミングはトレーニングの後が基本。ただ、筋肉を大きくする効果的なとり方については諸説あるという。

「海外の研究で、数年前までは筋トレ後、すぐにタンパク質を補給した方が、筋肉が大きくなりやすいとされていました。ただ、その後、海外の別の研究で、筋トレ後、筋タンパク質の合成は24~48時間にわたり高い数値が続くことが分かり、タイミングよりもその間に取るタンパク質の総量が重要だとの研究結果が報告されたのです」(中井教授)

 また、必要なタンパク質をまとめてとるか、分けてとるかについても海外で研究がなされているという。

 仮に、筋トレ後、80グラムのタンパク質が必要だとすると、「10グラムを8回」「20グラムを4回」「40グラムを2回」、と異なるとり方をした場合、20グラムが「筋タンパク質」の合成がもっとも高かった。

「あくまで筋トレ後の短い時間で『筋タンパク質』の合成がどうなったかを研究したもので、長期的な筋肥大への影響については、まだ研究が少ないのが実情です。ですが今は『筋トレ後の24~48時間以内』に『必要なタンパク質を何回かに分けて摂取する』という考え方が主流になっています。もしプロテインを使うなら筋トレ後、プロテインで20~30グラムのタンパク質をとり、その後、24~48時間以内に、必要なタンパク質を何回かに分けて食事でとることが効果的ではないかと思います」(中井教授)

 脂肪や糖質、塩分も少なく、手軽に栄養をとれるプロテインは便利だ。運動をしていない人でも、忙しくて朝食をとらない場合などは、プロテインで一食に必要なたんぱく質を補ってもいいという。

 一方で、飲み方を誤ればリスクも生じる。

「飲みすぎは、なによりお金がもったいないですよね」(中井教授)

 お金が減って脂肪が増えてしまっては、冗談にもならない。プロテインに過剰な期待をする前に、まずは自分に必要なタンパク質の量と、現在の摂取量を調べることから始めたい。(AERAdot.編集部・國府田英之)  

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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