「歩くのに時間がかかったり、立ち上がりや階段の上り下りがつらくなったり、立ったまま靴下をはけなくなったりしたら注意が必要です。他にも自宅でできる簡単なテストとして、『閉眼片足立ちテスト』というものがあります。目を開いて片足立ちになった状態から両目をつむり、20秒姿勢を保てない場合は神経機能の低下と筋力低下が原因と考えられます」(三橋医師)

 筋力が低下すると、「立つ」「歩く」といった移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下、ロコモ)に至る。ロコモが悪化すると、今度は体重減少や身体活動・歩行速度・筋力が低下する「フレイル」という要介護・要支援手前の状態に。フレイルになると転びやすく、けがや事故につながる。日頃の運動はロコモ予防に有効で、高齢者が自立した生活を送るためにも良い。ただし、斉藤医師は注意も必要だという。

「65歳以上になると誰でも等しく筋繊維が減り、全身の筋肉が衰えた『サルコペニア』の状態に近づきます。また、コロナ禍による外出機会の減少も相まってダブルで筋肉量が減っている。筋肉の伸縮がままならない廃用性筋萎縮が起き、転倒しやすいロコモやフレイルの予備軍とも言えます。50代までと同じ気持ちで安易に激しい運動をするのはやめたほうがいい。転倒の恐れがある運動をするのも危険です」

 運動で逆にけがをしては本末転倒だ。斉藤医師は「体力を過信しないことが大事」だと言う。

「運動前後にじんわり汗が出るまで時間をかけてストレッチすることが大事です。ストレッチが不足して、ハムストリングがつっぱったりしているままにするのは良くない。クリニックのリハビリテーションや、柔道整復師のストレッチなどを上手に活用してほしいです。故障を持っている方は、その部位のアイシングがおすすめ。20分アイシングすれば、筋肉の伸びが硬くなると思うけどそうではなく、むしろストレッチしやすくなります。アイシングの後にストレッチすると良いでしょう」

 安全に運動に取り組むことが、若返りの一歩となりそうだ。(桜井恒二)

週刊朝日  2022年5月27日号