※写真はイメージです (GettyImages)
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 体力が向上しているのはアスリートだけではない。スポーツ庁が毎年実施している(15年9月までは文部科学省が実施)体力・運動能力調査の報告書で1998年時点からの記録を追うと、握力、上体起こし、開眼片足立ち、長座体前屈、10メートル障害物歩行、6分間歩行に関する高齢者全体(65~79歳)の年度別数値がゆるやかに上昇傾向にある。

 例えば75~79歳女性の握力は98年と2020年で比較すると約9%(約1.8キログラム)上昇。呼吸機能は飛躍的に向上し、6分間歩行の距離は約14%(約480メートル→約550メートル)伸びた。

 スポーツ庁が21年11月に実施した「スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、運動・スポーツの実施状況に対する満足度も、大切だと感じている割合も70代が最も高い。また70代回答者の8割超が「健康・体力の保持増進」に重きを置いているという。高齢者の相当数が、体力の向上・維持に高い意欲を持っていることがわかる。

 同庁も22年3月のスポーツ基本計画において、国民医療費が年間40兆円を超える規模に膨らむ今、「スポーツによる医療費抑制に係る研究成果は数多く報告されており、スポーツによる健康増進に対する期待が高まっている」と言及。スポーツ実施率の向上を通じ、国民の健康寿命の延伸に取り組んでいる。

 かつて読売巨人軍のドクターを務めた斉藤明義氏は、高齢者の体力向上についてこう語る。

「徐々に体力が上向いているのはうなずける話です。昔は60歳で定年になり引退していたところ、現在では65歳、70歳まで働く意欲が向上している。高齢者に健康を維持してもらうために国が実施している政策もだんだん実を結んでいる印象を受けます。私が日頃患者と接する中でも、姿勢を気にするご高齢の方が増えている。姿勢が崩れることで生活の質が落ちるという認識がだんだん浸透していると感じます」

 とはいえ加齢に伴って体力は落ちていく。体力低下のサインはどうやって見分ければいいのか。

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