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 新型コロナウイルスの流行が始まって2年以上が経ちました。病院では入院患者の面会制限がされていますが、そういった制限は大学医学部の教育にも影響を及ぼしています。コロナ禍の医学部教育について、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が語ります。

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 医学部は6年間で、基礎医学を学ぶ期間と臨床を座学で学ぶ期間、患者さんを診て学ぶ実習期間にわけることができます。患者さんを診て学ぶ臨床実習は、「ポリクリ」(ポリクリニック)や「クリクラ」(クリニカルクラークシップ)と呼ばれ、1年から1年半かけてほぼすべての診療科を回ります。それぞれの科での実習期間は1週間から2週間。大学によっては希望した診療科を追加で1カ月から2カ月勉強することもできます。

 はじめての臨床実習はとても緊張します。教室で授業を聞いて学んでいた期間は、極端な話、寝ていても試験さえできれば単位を取得できたのに対し、患者さんの前に出るとそうはいきません。これまで学んできたことを患者さんの許可を得ながら、五感をフルに使って学び直していきます。白衣を着て病院に出るのですから、身だしなみ、言葉使い、それにコミュニケーションスキルを求められる場面もでてきます。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 COVID-19が流行して、医学部の教育も大きく変わりました。座学はオンライン授業が多くなり、臨床実習ですら座学に切り替わりました。患者さんの目の前に出る機会が極端に減り、臨床実習を十分に行えないまま医者になっていく医学生もいたと思います。

 医学生が患者さんから学んでもらうのはとても大事な機会です。しかし、コロナ禍ではその行為自体がリスクになります。実際に起きたケースとしては、臨床実習をしていた学生が発熱しPCR検査でコロナ陽性だったと後にわかりました。その学生は発熱前に外来見学を行っていたため、指導していた指導医が濃厚接触者の扱いとなり1週間以上出勤停止となりました。医学生経由で患者さんがコロナに感染しなかったのが不幸中の幸いですが、医師が出勤停止になったことで診療科としては大きなダメージを受けます。このようなことが日本全国の医学部で起き、従来存在していた臨床実習が大きく変わりつつあります。患者さんとは接することなく学べるような場面も増えています。

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