コロナ禍で過酷な労働を強いられている医療従事者。コロナ患者を対応した40代の男性看護師もその一人だ。オミクロン株の流行で感染者が激増し、厳しい労働環境だった「第6波」を振り返ってもらった。AERA 2022年5月30日号の記事から。
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「限界に近いです。みんな、ぎりぎりのところでがんばっています」
男性は元々、同じ病院の呼吸器内科病棟に勤務していた。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年2月、院内に感染症病棟がつくられ、そこで働く看護師の募集があった。男性はコロナ患者の力になりたいと思い、手を挙げた。
だが、これまで経験したことがない過酷な労働だった。
■病室から出られない
朝8時に病院に到着すると、防護服に着替え、ゴム手袋、顔を覆うフェースシールド、ゴーグル、ヘアキャップ、高性能マスクなどフル装備で病室に入る。
防護服は通気性が悪く、じきに汗が噴き出してくる。しかし、水分補給も汗を拭(ふ)くこともできない。ゴーグルは曇り視界も悪い状態で、食事やトイレの介助、点滴や痰(たん)の吸引を行った。
最も大変だったのは、オミクロン株の流行で感染者が激増した今年2月から3月にかけての「第6波」のとき。重症のコロナ患者が次々と運ばれてきた。持病を抱えている高齢者も多く、通常2時間交代の決まりなのに、時間通りに病室から出られないことも多かった。病室を出ても、入院患者が運ばれてきたり患者の容体が急変したりすれば、また防護服を着けて中に入った。
「今がふんばりどころ。がんばりましょう」
男性は、若い看護師たちに声をかけて乗り切った。
新規感染者数が高止まりするなか、「第7波」の到来も懸念されている。男性は心配する。
「人手が足りず感染予防のゴム手袋なども不足しがち。特に若い看護師は心が折れて辞めたいと思ってもしかたがないと思いますし、こうした状態が続くと看護師になりたいという人も減っていくのではないでしょうか。そうなれば治療はさらに脆弱になり、病気になっても医療を受けられない悪循環が起きます」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年5月30日号より抜粋