巧みな外交でいち早く停戦していたのに加え、ソ連のスターリン書記長が敵のフィンランド軍の勇戦を評価し「彼らとゲリラ戦になれば厄介だ」と配慮したためと言われる。

戦後のフィンランドはソ連と友好的な自由主義国として冷戦時代の東西貿易の窓口となり、特異な地位をいかして商工業が発展、欧州で最も高いと評された生活水準を謳歌(おうか)し、今日でも1人当たりのGDPはドイツを上回る。
ソ連が崩壊し、ロシアがウクライナで勝てない今、フィンランドはロシアの軍事力を恐れて気兼ねする必要は減り、特別の得意先でもなくなったから、NATOに加盟し欧米と一層親密になるのは賢明かもしれない。だが成功してきた中立政策を捨て、米国配下の小国の一つとなるのは対ソ戦「冬の戦い」で得た勇者の名声を忘れさせることになりそうだ。
(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)
※AERA 2022年5月30日号より抜粋