コロナ禍で医師たちが重い負担を背負わされる中、大学医学部の志願者数は減っているのかと思いきや、その人気は落ちていないようだ。最新動向を読み解く。
【グラフ】2013年から昨年までの医学部志願者数の推移はこちら
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コロナ禍以降、医学部の人気動向には影響が出ているのか。河合塾教育情報部の岩瀬香織チーフはこう話す。
「コロナ禍で医師は『大変な仕事』という印象が高まっています。一方で、経済が不安定になると、資格系の学部学科の志望者が増えます。医療系の学部は資格に直結しますので、手堅い人気があります」
医学部の志願者数は、18歳人口の減少を主な背景として、ここ10年ほど減少傾向にある。国公立(一般入試前期日程)では、2014年の約2万人をピークに年々減少し、21年は約1万5千人。私大でも18年の約10万9千人から、21年には9万1千人まで減った。受験期に新型コロナの緊急事態宣言が直撃した21年は受験生が私立大の出願校数を控える動きが目立ち志願者減につながった。22年入試では、確定値は出ていないものの国公立の志願者数は前年比約102%、私立では同99%といずれも前年並みとなった(5月18日時点)。
倍率(志願者数÷合格者数)はどうか。国公立は志願者数同様に14年が最も高く5.4倍。その後は低下傾向が続き、ここ3年は20年が4.0倍、21年が3.9倍で、22年は4.0倍程度(いずれも一般選抜前期日程)。私立は14年が19.5倍と最も高く、20年が14.7倍、21年が12.9倍、22年が現時点で入試結果が判明している大学で11.6倍(いずれも一般選抜)。特に国公立はここ3年ほど横ばいに近い。
「18歳人口は年々減少傾向にあります。22年は21年から約2万人減って約112万人でした。大学志願者数も減少していく状況の中で、前年並みの数値を保っていることは、医学科人気が落ちていないことの表れと言えるでしょう」(岩瀬さん)
個別の大学を見ると、国公立・私立ともに倍率が変動したところが目立つ。岩瀬さんは「医学部志望者は志望の学部に入れるなら地域は問わないという層も一定数いて、前年の入試結果をもとに少しでも入りやすい大学を狙います。そのため、多くの大学で志願者数の増減が大きい傾向があります」と前置きしつつ、「全体が変わらなくとも個別の大学でみれば志願者数は変動している」と話す。