官僚にとって政治家への「根回し」は重要な仕事だ
官僚にとって政治家への「根回し」は重要な仕事だ

 なおその政治家はその後大臣となられ、テレビでは爽やかな印象を与える政策通として知られる方ですが、官僚に対しては冷たく当たる方でした。官僚の側からそのようなことを暴露することはありませんが、テレビやメディアでは優しそうに見える議員でも、仕事では非常に厳しく当たられる方もいますので要注意です。

■政治家への根回しを怠るとどうなるか

 先に述べたようなこともありますので、正直にいうと根回しについては気が重くなることも(特に悪名高い一部議員については)あるのですが、かといって根回しを怠った結果、「俺はこの件を聞いていないぞ」と言われたら、官僚としては失格です。日本の憲法と法律では、法律案や予算案など主要施策は国会の議決を経なければ実行できない仕組みになっています。

 議決権を持つ議員が、それだけで反対票を投じるかどうかは(党の方針もありますので)わかりませんが、プライドを傷つけられた議員がそれ以降、嫌がらせをしてくることは十分に考えられます。

 したがって、幹部クラスの優秀な官僚は、根回しのときだけでなく、普段からこうした議員と良好な関係を保っておき、いつでも報告・相談できるようにしています。こうすることで、多少の失敗を大目に見てもらったり、うるさい他の議員を抑えてもらうなどの効果が期待できます。

■「なんだこのホッチキスの留め方は!」と私を叱った局長

 私はこの根回しについて、官僚になったばかりの頃に洗礼を受けました。上司である局長と二人で、とある重要案件について国会議員を訪問した際、議員会館の部屋に到着して局長から「資料を」と言われて私が準備した資料を取り出し議員にお渡ししたところ、局長が私に対し「なんだこのホッチキスの留め方は!」と議員の前できつく叱ったのです。普段は温厚だと思っていた局長から初めてと言っていいほど叱られ、かつその理由が「ホッチキスの留め方」だったので私は二重にショックを受けました。

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議員を「大切にしています」というポーズ