コロンビア大学の正門前に立つ筆者(写真/筆者提供)
コロンビア大学の正門前に立つ筆者(写真/筆者提供)
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 ドキュメンタリー映画監督の海南(かな)友子さんが10歳の息子と年上の夫を連れ、今年1月からニューヨークで留学生活を送っている。日本との違いに戸惑いながら、50歳になっても挑戦し続ける日々を海南さんが報告する。

【写真】街中には、新型コロナの検査をするテントが

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 留学のきっかけは、40代も後半になって仕事や子育てに追われるなか、何か”自分のためだけ“の挑戦をしたいと思ったことだ。私はテレビのディレクターを経てドキュメンタリーの映画を作る仕事をしている。ずっと同じ仕事してきて25年。仕事と家事、介護などで自分の時間はほとんどない。このまま50歳、60歳になるとなんとなく後悔しそうだと思った。だから、

「若い時からしてみたかったことでまだしていないことに挑戦しよう。失敗したっていいじゃない。挑戦したこと自体が自分にとって意味がある」

 と数年前のある夜、リビングで1人思い立った。

 正直、学生時代の英語の成績は悪かった。何十年かぶりに毎日、子どもが寝た後や出勤前にありとあらゆる機会を使って英語を勉強した。今までしたことないくらいしたので本当に倒れそうだったが、2年後にはそれが実って、フルブライト奨学金という由緒ある奨学金を得た。

 今、コロンビア大学に留学をしているのは現実なのか? と自分でも不思議だ。なんでも何歳からでもチャレンジってしてみるもんだ。

 4月、ニューヨークでは一部を除いてマスクの義務が撤廃された。久しぶりにほおに風が当たった。この爽快感はたまらない。ニューヨーカーの皆さんは、解除が決まった直後に一瞬でマスクを外した。「マスクの何がそんなに嫌なの?」と思ったが、アメリカに長く住む日本人の友人は「アメリカ人はマスクの強制に従うこと自体に耐えられない」と言っていた。

 家族でNBA(米プロバスケットボール協会)の試合に行ってみたら、2万人の観客はほぼ全員がノーマスク。後ろの席の若者は興奮して叫び、隣の席の女性たちはハーフタイムショーで歌いながら踊り出した。ビール片手にノリノリの大観衆。ついこの間まで、ワクチン証明書とパスポートを見せないと飲食店に入ることもできなかったのに、うそみたいな変わりようだった。その光景に、不安がぬぐえない私と夫と息子は、マスクをしたまま観戦した。なんだか、私たちが悪い病気に罹患(りかん)している危険人物みたいだった。

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コロナが終わったわけではない