廣津留すみれさん(撮影/戸嶋日菜乃)
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 米・ハーバード大学とジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(28)。現在はコンサートなどの音楽活動を行いながら、日本の大学でグローバル人材を育成するための授業も受け持っている。廣津留さんの頭の中を探るべく、どんなふうに音楽や勉強とかかわってきたのかを語ってもらうAERA dot.連載。第9回は、ハーバードでの音楽との向き合い方や、大きな影響を受けたというヨーヨー・マ氏との出会いについて。

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 幼い頃からバイオリンをはじめ、今年のグラミー賞に参加アルバムがノミネート、2月にはCDをリリースするなど、バイオリニストとして活躍する廣津留さん。しかし意外にもハーバードに入学した頃はプロを目指すつもりはなかったという。

 「3歳から続けていることもあって、バイオリンを弾くことは私にとって体の一部のようなものです。一生弾き続けていくだろうとは思っていました。でも、演奏家として食べていくには相当な覚悟が必要ですから、ハーバードに入学した頃はそこまでの決意はありませんでした。課外活動のオーケストラで一緒に弾いていた友人たちもプロ並みに演奏が上手なのに、専攻は生物工学や脳科学など、音楽以外を選んでいる人が多くいました。彼らを見て、私もいろいろな道があると感じていたので、バイオリニストになろうと強く意識したことはありませんでした。一方で、さまざまな個性を持つ人たちが集まるハーバードのなかにあって、バイオリンが弾けることは自分の強みであることに気づきました。それを生かしたい思いもあって、3年次の終わりからはハーバードで音楽を専攻するようになりました。

 ハーバードの音楽専攻に実技の授業はありません。私が選択した授業は音楽理論や電子音楽の作曲などで、体系的に音楽を学んだり、作曲の授業でも電子音楽を聴いてみんなで議論したり、身の回りの物から音を採取して自分の作品を作ったり。音楽をよく理解していたはずの自分にとっても目からウロコの内容ばかりでした」

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