キンジャールはイスカンデルよりも射程を伸ばしただけの兵器であり、それによって戦局が大きく変化することは考えられないという。さらに、藤村さんはそれらがあまりに非効率であるがゆえに、別の意図が考えられると指摘する。

「そんな兵器をわざわざ戦闘機に積んで発射するのも効率が悪い。『極超音速ミサイル』をうたい、キンジャールを使用するのは、欧米に対するデモンストレーションの意図が強いと思われます」

 藤村さんいわく、ロシアが「新兵器」とアピールしてきたもののなかで、実際に効果を発揮したものはなきに等しいという。つまりは、ロシアのはったりだった、と。

■新兵器「心臓部」は欧米製

「ほかに目新しい兵器といえば、ロシアが以前から開発してきた攻撃型ドローン『オリオン』がありますが、あまり活動しているようには見えません」

ロシア側が「最新」や「高性能」であると標榜する新兵器の数々。だが、実態として開発が進んでいなかったり使われなかったりする背景には、半導体を中心とした部品不足が影響している。

「レーザー兵器やミサイルもそうですが、ロシアは心臓部に組み込む半導体を欧米に依存してきました。それが経済制裁で入手できなくなり、製造やメンテナンスが困難になっている。『新兵器』の使用はどんどん少なくなっていくと思われます」

 戦車にしても、新しいタイプはウクライナ軍との戦闘でほとんどが失われた。そんな中、英国防省は5月27日、ロシア軍が約50年前に製造されたT-62戦車をウクライナ南部に配備した可能性があると発表した。半世紀も前につくられた戦車、ということだ。

「正直、そこまできたか、という感じです。今後、ロシア軍の装備は古い兵器が中心になっていくでしょう。ただ、旧ソ連時代の遺産というか、昔、大量に製造した武器、弾薬がロシア国内にはたくさん眠っています。すぐには使用できないと思いますが、おそらく時間をかけて修理することで、湧き出るように現れるでしょう」

 加えて、いまロシア軍が直面しているのは、それを扱う兵士の不足という。

 ロシア軍は将校のほか、契約制の職業軍人と、徴兵による徴集兵で構成されている。

「ウクライナの戦場に職業軍人を根こそぎ投入して、既に1万5千人から2万人が戦死したといわれています。なので、武器はあっても、それを動かす兵士が足りないという事態に直面しているわけです」

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