プーチン大統領(gettyimages)
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 SF映画のようなレーザー兵器を投入したりミサイル防衛網の突破をもくろむ極超音速ミサイルの発射を行ったりしたかと思えば、半世紀前に製造された戦車をよみがえらせる――ロシア軍の兵器の運用は謎めいている。その裏には何があるのか、ロシア軍の兵器に詳しい軍事評論家の藤村純佳さんに聞いた。

【写真】ロシア軍の侵攻を止めるためにウクライナ側が自国の橋を爆破した瞬間

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「ロシアを抑え込もうとした取り組みは失敗した。現実を直視するがいい」

 ウクライナ侵攻からさかのぼることおよそ4年前。プーチン大統領は2018年3月、年次教書演説でこう言い放ち、アメリカを強くけん制するとともに、大型ICBMなど、6種類の新兵器を巨大なスクリーンに映し出した。

 その一つ、レーザー兵器がいま、ウクライナの戦場に投入されている。

 5月18日、ロシアのボリソフ副首相はレーザー兵器「ザディラ」をすでに前線に配置していることを明らかにし、「5キロ離れたドローンを5秒で破壊できる」と豪語した。

 まるでSF映画のようだが、レーザー兵器とはいかなるものか。藤村さんは、こう指摘する。

「高出力のレーザーでドローンやミサイル、偵察衛星などを狙い撃ちするものです」

 レーザー兵器を投入した理由について、「高価なミサイルを使い果たさないようにするため」とボリソフ副首相は語った。藤村さんは、その意図について、こう説明する。

「レーザー兵器の大きな利点は二つあります。一つはコストパフォーマンスのよさです。ウクライナ軍は安価なドローンを偵察に使い、ロシア軍を攻撃していますが、それを打ち落とすのに1発、数百万円以上もするミサイルを発射するのはまったく割が合いません。一方、レーザー兵器であれば、発射するのに『電気代』しかかかりません。二つ目の利点は『弾切れ』がないことです。ミサイルや砲弾と違って、レーザーは電力さえ確保できれば撃ち尽くすことはないですから」 

■「レーザー」に必要な電源

 デメリットもある。

「レーザー兵器は、ものすごく電力をくいます。当然、大量の燃料を消費します」と、藤村さんは指摘する。戦場には電源がない。そのため、発電機を回して自前で電気をつくり出さなければならない。

 いったい、レーザー兵器はどのくらい電気を使うのか。

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「極超音速」の信憑性