5月1日に北海道・知床半島沖の海底から引き揚げられ、その後も検証が続いている観光船「KAZU1(カズワン)」。昨年にも2度事故を起こしていたことは報じられているが、その際、運航会社が作る「改善報告書」が、国土交通省が作った文案を“コピペ”したもので済まされていたことが、AERAdot.が入手した資料から明らかになった。
<改善報告書のイメージです。あくまで仮で作成したものですので、御社に見合ったものを作成していただければと思います>
<参考までに別紙1と別紙6を作成しました>
これは、2021年7月、カズワンの運航会社「知床遊覧船」と、国交省の出先機関である北海道運輸局がやりとりしたメールの一部だ。
カズワンはこの年の5~6月に2度の事故を起こしており、国交省は知床遊覧船に対し、2回の特別監査を行った。その結果、運航管理者との連絡態勢、定点連絡、船員の見張り、記録の記載などを指導し、改善報告書を作成するよう求めた。
しかし、AERAdot.が入手した資料などによると、1カ月近く経過しても、改善報告書は届かず、北海道運輸局が7月に“助け舟”を出したのが冒頭のメールの一文だ。
そこには、二つの添付ファイルがあった。
一つは、知床遊覧船の社長の名前が書かれ、冒頭に<社内に安全最優先の徹底を図り、全従業員がこれを徹底して実行し、安全運航をしてまいります>
と記されている改善報告書。
もう一つは、「輸送の安全確保に関する指導を受け全体会議を開催した」と題し、法令順守や安全管理についての指摘事項について社内で確認した、と報告している文書だ。
つまり、国交省は、改善報告書と、指導を受けた知床遊覧船が社内でどんな会議を開いたかを示す文書を作ってあげたわけだ。
知床遊覧船は、送られてきた二つの添付ファイル文書の文言をほとんどそのままトレースし、それを、北海道運輸局にFAXとメールで送信していた。
例えば、「輸送の安全確保に関する指導を受け全体会議を開催した」
という文書では、まったく同じ文言が記され、開催日時や参加者として社長名や「カズワン」の船長の名前が追加されているだけだった。