今回の事故が起きたとき、運航管理者である知床遊覧船の社長は、航行中は事務所に勤務していなければならないのに不在だった。安全管理規定で定めた、運航基準を上回る波の高さが予想されたのに出航していた。事務所の無線は壊れていて受信できず、航行中の定点連絡も怠っていた。

 前述した、昨年7月に“コピペ”した改善報告書などで示した改善策は、何も改善されていなかったことが今回の事故で明らかとなった。

 5月27日、衆議院予算委員会で責任を追及された岸田文雄首相は、

「結果として事業者の安全意識の欠如が把握できなかった。これは、国土交通省として責任を十分果たしていなかったと認識をいたします。責任を感じるからこそ二度とこうした事故を起こしてはいけない」

 と答弁したが、これまで詳述したとおり、知床遊覧船の安全意識の欠如は、昨年の改善報告書の作成に際してのやりとりを見れば明らかだ。国交省の再発防止に向けた意識も欠如していたと言わざるを得ない。

 ある被害者の遺族が悔しい思いを吐露した。

「カズワンが引き上げられ、国会やマスコミ報道で真相がわかってきた。国が知床遊覧船に対して、安全管理を徹底するように厳格な指導、処分をしていれば、事故にあうことはなかったとの思いを日々、強くします。これは人災ですよ」

(AERAdot.編集部・今西憲之)

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