「花見過ぎたら、カキ食うな」ということわざも今は昔。365日おいしく味わうことができる(photo/写真映像部・高野楓菜)
「花見過ぎたら、カキ食うな」ということわざも今は昔。365日おいしく味わうことができる(photo/写真映像部・高野楓菜)

■おいしいから食べる

 出身はカキの主要産地・広島県。年末や連休に帰省したときは、親族そろってカキを楽しむ。そんな彼も、一度だけカキに「あたった」ことがある。

「あの日は生ガキをたらふく食べました。なんとなくおなかの調子がおかしいと思ったら、下痢が止まらなくなった」

 つらかった。カキの神様に見放された、と思った。それでも、今もカキを食べ続けている。

「おいしいから食べるんです。カキは悪くありませんから」

 冒頭の若宮消費者担当相のように、「懲りずに食べる」カキラバーは多い。AERAの男性記者(43)もそうだ。編集部のミーティングに現れなかった日、彼は人知れずトイレにこもっていた。家族4人で生ガキを食べて、あたったのは自分だけ。「もともとおなかが弱いほう」だから、「カキを恨んではいない」。

 なぜ、人はカキに魅了されるのか。カキの仲卸「山小三(やまこさ)」の佐渡俊彦さん(57)はこう説明する。

「カキはミネラルが豊富で、産地によって一粒一粒の塩味はもちろん、身と貝柱の大きさや厚みが全然違います。加熱すると水分が出てしまい、違いがわかりにくくなってしまう」

 山小三では、十数種類のカキを取り扱っている。揚げたり焼いたりするならそこまで種類はなくていい。それぞれの繊細な味わいが楽しめるのは生食でこそ。食べ比べてほしい、という思いからだ。

「おなかが痛くなった前日にカキを食べていたら、カキのせいだと思うでしょう。でも、病院に行かない人も多い。“カキの冤罪”もあるかもしれない」

 生食表示の見直しは、消費者、生産者、そしてカキ自身を守ることにつながるかもしれない。(編集部・福井しほ)

AERA 2022年6月13日号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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