モナコのモンテカルロで開催された、シャネルの2022/23年クルーズ・コレクション。有観客で行う3年ぶりのショーとなった(写真:CHANEL提供)
モナコのモンテカルロで開催された、シャネルの2022/23年クルーズ・コレクション。有観客で行う3年ぶりのショーとなった(写真:CHANEL提供)

 コロナ禍で、展覧会などのイベントの多くは中止や延期を余儀なくされた。ファッション業界も例外ではなく、今年5月にモナコで開催されたシャネルのクルーズ・コレクションは、同ブランドとして有観客で行う3年ぶりのショーとなった。

■リアルな場でつながる

 2020年にはショーをデジタル配信し、21年は無観客でショーを実施。だが、「コレクションにおいてショーは不可欠であり、そこには観客の存在も欠かせない」と、パブロフスキー氏は考えていた。

「この状況下で、有観客でショーを行うことはそれなりに負荷がかかることですが、それはチャレンジであると考えました。ショーを行えば、バイヤーの方に見ていただけるだけでなく、サプライヤーにきちんと仕事を依頼することもできる。非常に大きな意味があったと思います」

 ショーのデジタル配信を含め、コロナ禍では“ビジビリティ(可視性)を最大化すること”にも力を注いだ。リアルな場を設け、未来の顧客になり得る若い世代と直接つながることにも意識を向けた。

伝統工芸やクラフトマンシップを集めた施設「le 19M」で行われた「マスタークラス」には、学生など200人が招かれた(写真:CHANEL提供)
伝統工芸やクラフトマンシップを集めた施設「le 19M」で行われた「マスタークラス」には、学生など200人が招かれた(写真:CHANEL提供)

 なかでも、パブロフスキー氏をはじめ、音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムス氏やジャーナリストのタイラー・ブリュレ氏、モデルのカロリーヌ・ド・メグレ氏ら、各界のセレブやアンバサダーを迎えたイベント「マスタークラス」は好評を博したという。

「重要なのは、シャネルの哲学やメッセージを一貫性のある形で伝え続けること。それが功を奏したのか、店舗が再開してからの我々のビジネスは非常にうまくいっています」

■哲学を発信してゆく

 展覧会をサポートすることも、ブランドの哲学やメッセージを、一貫性を持って発信していくことにつながる。

 パブロフスキー氏は「現代におけるファッションの役割は“夢を贈ること”」と言う。同時に「ブランドとして、倫理的に正しくありたい」とも力を込める。「我々は、自分たちのブランドに対して、非常に厳しい態度で向き合っています」

 2020年には二酸化炭素の排出削減などを柱とした長期戦略「シャネル ミッション 1.5」を発表した。その根底にあるのは「次世代の子どもにより良い地球を残したい」という強い思いだ。

 パブロフスキー氏は言う。

「より良い形で“世界のこれから”を考え、リードしていく。それがシャネルにとっても次のステップになると考えています」

「ガブリエル・シャネル展」は9月25日まで開催。(ライター/古谷ゆう子)

AERA 2022年6月20日号

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