林:先生はまだ「日刊ゲンダイ」のエッセー(「流されゆく日々」)をやってらっしゃるんでしょう?
五木:創刊のとき(1975年)からやってます。林さんも週刊文春のエッセーをずっとおやりになってるじゃないですか。あれも長いねえ。
林:「いつまでもダラダラやりやがって」と言われるんですけど、出版社もちゃんとアンケートを取ってるんですから、先生、堂々と続けましょうよ。私が偉そうに言うことじゃないですけど(笑)。
五木:それは心強い話だなあ。向こうから「もういいです」と言ってくるまでは、ということね(笑)。
林:私はまだ「an・an」のエッセーやってるんですよ。孫みたいな読者に向かって。
五木:すごい! 僕の日刊ゲンダイの連載は47年目になるんだけど、会社がつぶれるまでやろうと思ってる。迷惑だろうなあ(笑)。
林:先生こそすごいです。
五木:林さんは年々パワフルになってきてますね。とどまるところを知らない。僕は昔よりいまのほうが林さんの本を読んでるんです。『李王家の縁談』や『小説8050』も読んだし。今度の『奇跡』は書きおろしですってね。日本文藝家協会の理事長という国際的な活動をこなしながら、しかもこれだけ連載を抱えて、よく書きおろしなんてできるなと思って。
林:短かったし、彼女の日記もありましたし、わりとラクでした。
五木:林さんには、(瀬戸内)寂聴さんじゃないけど、いくつになっても色恋沙汰の小説を書き続けてほしいですね。
林:でも、いま色恋沙汰はすごくたたかれるんです。『奇跡』もネットで「不倫を美化するな」「こんな女、許せん」とか。
五木:だけど、そうやって社会に波風を立てるのも作家の仕事の一つだからね。みんなからほめられて、文科省から表彰されるだけじゃ困るんで。
林:はい。私もそう思ってるんですけど。
五木:林さんは大器晩成型です。いまからどんどん大きな作品が出てくると僕は見てる。
林:ほんとですか? うれしいです。頑張ります! まだ体力ありますので。
五木:日本ペンクラブの会長が桐野(夏生)さんで、日本文藝家協会の理事長が林さんで、この二本柱があることで、日本の文芸の世界が安定してるような感じがするんです。いや、今後はもっと何かあるかも。
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(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2022年7月1日号より抜粋