林:ああ、なるほど。

五木:僕はレコード会社の学芸部というところにいて、ずっと童謡を書いてたんですよ。

林:五木先生の童謡って、例えば何ですか。

五木:自慢できるものはないんだけど、いまの上皇后、昔の美智子妃殿下が「ねむの木の子守歌」という歌を書かれたんです。で各社競作になって。

林:「♪ねんねのねむの木 眠りの木……」。

五木:それのB面が僕の詞なんですけど。「雪がとけたら」というんですが、A面がすごく売れたので、僕も“裏待ち詩人”としてしばらくそれで生計を立てさせて頂きました(笑)。そんなことで、石原さんとはわりと垣根なくいろいろ話をして、ちょっとコミュニケーションがありました。

林:そうだったんですか。

五木:石原さんは歌を余技でやってるんじゃないんですよ。本気でやってたんです。そして、心の中では裕次郎より俺のほうが歌がうまいと思ってた。声もいいし、音程もしっかりしてるし、リズム感もあるし。

林:へぇ~。私、石原慎太郎さんが歌ってる姿、まったく想像できないですよ(笑)。

五木:以前、NHKで「歌う作家たち」というアルバムをシリーズでつくったことがある。三島由紀夫さんの「からっ風野郎」、石原慎太郎さんの「夏の終わり」、野坂昭如の「マリリン・モンロー・ノー・リターン」、戸川昌子さんの「金曜日の晩に」、新井満さんの「オクトーバー14・外は雨」の五つを取り上げて、それにコメントをつけたんです。これは自分で言うのはなんだけど絶対、面白いです。みんなそれぞれ味があってね。林さんは歌やらないの?

林:いやー、なかなかお声がかからないんです。

五木:やるんだったら詞、書くよ。

林:ほんとですか先生! うれしい!

五木:なんか、小説家同士の対談じゃないみたいだね(笑)。

林:そうですね(笑)。話は変わりますけど、先生が最近すごく行動的になられたのは、早寝早起きになったからじゃないですか。

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