09年センバツで長崎県勢では春夏通じて初の全国制覇を達成した清峰も、夏は甲子園に来ることができなかった。
春夏連続出場を狙った長崎大会、最速152キロ右腕・今村猛(元広島)は、初戦から連続無失点記録を継続し、準々決勝で大瀬良大地(広島)の長崎日大と対戦した。
1回、先頭打者を投ゴロに打ち取った今村は、次打者も三振に仕留めたが、振り逃げで出塁を許してしまう。
これでリズムを崩し、3番に直球、4番にスライダーを連打されて大会初失点となる2点を失った。
一方、「清峰に勝つことがチームの目標だった」という大瀬良は「初回に2点取ってくれたので、すごく楽になった」と気合が入り、「これ、打てないなと思った」と今村が脱帽するほどの力投を見せる。
そして、1対3で試合終了。今村は「自分のせいで負けた。またみんなで甲子園に行こうと言っていたのに申し訳ない」と悔恨の涙を流した。
長崎大会準々決勝で火花を散らしたライバル2人は、くしくもプロでチームメイトになり、大瀬良は先発、今村はリリーフとして広島の球団史上初の3連覇に貢献することになる。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。